新クリーンセンター事業についてのご説明
(奈良県知事発言に対する補足説明)

                                                         令和5年3月22日

                                                         山辺県北西部広域環境衛生組合

                                                         管理者 並河健


 奈良県知事の荒井正吾氏が、知事選告示前の最後の定例記者会見において、私たち10市町村が進める広域ゴミ処理施設事業に対し、「賃借」であること、「土地代より3倍高い賃借料を払うこと」に疑義を呈し、奈良モデル補助金の採択の是非を有識者に問う考えを示しました。10市町村民をはじめ県民の皆さまに、事務組合管理者として補足説明します。

 10市町村の広域化は、元々天理市のゴミ処理施設老朽化対策として新施設の用地を賃借できる見通しが立った後、偶然その立地が広域化に最適だったため、経費節減を図る天理市の申し出を受けて、他ならぬ奈良県が県内の市町村に参加を呼びかけたものです。
 
その証拠の一端を下記にお示しすると、まだメンバーが固まりきっていなかった事務組合発足前の平成27年6月11日、荒井氏も出席した首長レベルの検討会議で使用した説明資料(※下記URL)に「天理市岩屋町、楢町にまたがる土地を候補地として選定し、所有者である天理教本部から賃借することで合意しています」と明記しています(その後、組合管理者より知事室において荒井氏に「賃借」と直接念押ししたこともあり、2年前までご存知なかったはずがありません)。
 https://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/kouikikanituite.pdf

 同会議のテープ起しの発言記録(※下記URL)では、荒井氏は「広域化については、県が支援させていただく。調査から計画段階、施設整備までの一連を支援する」「立地がないと広域が出来ないので天理市のイニシアティブで立地をして処理しようとすることは素晴らしい試みと思う」とはっきり発言しています。
 https://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/kubityoukaigi1.pdf
 天理市以外の9市町村にとっては、天理市が「賃借」する用地での事業に対し、奈良県知事自らが「施設整備までの一連を支援する」と約束したことを信じて広域化に参加された訳ですから、今般の荒井氏の発言は市町村長に対する前言と矛盾しています。
 しかし、それから約5年半後の令和2年末〜令和3年初旬にかけて、荒井氏は県職員を通じて間接的に「賃借と知らなかった」「賃料が土地代を上回ることを懸念」と伝達して来られました。

 組合管理者として、当初から賃借で進んでいることは知事ご自身が良くご存じであること、また賃借とした理由は、地元自治会等が施設の永続化だけは避けたいと切実に希望され、それに応えるために「更新のない定期借地」としていること等を即座に説明しました。

 また、今般の会見で荒井氏は「住民は了解しているのか」「公金の支出には透明性、公正性が必要」と主張しています。
 3月17日付で発表した本事務組合の説明書のとおり、本組合は地権者側の鑑定と組合が取った鑑定に差があったことも組合議会に率直に説明した上で、造成済みの用地で道路アクセスも確保され建設費が大きく節減できること、この用地だから予算合理化できるスケールメリット(県試算で計550億円)を総合的に判断いただいき了承を得ました。平成29年以来、公に予算を組んで賃料を支払ってきました。
 https://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/sinkurinsenntagosetumei2.pdf
 そして、環境影響評価や地質調査など、この土地の上に施設を建設することが当然の前提である予算に対して、奈良県も奈良モデル補助金を一貫して支出してきました。

 荒井氏が今回発言しているように、公的施設の用地には安定した運営を担保する必要があり、だから本組合は準備・除却(10年間)と施設の耐用年数(50年)を足した最低限の60年間の「定期借地」としました。安定性が確保され、無駄もありません。

 60年間の賃料合計と売買価格を単純比較するのがそもそもナンセンスですが、本事業用地の至近の距離において、本組合が契約する直前まで約26年間、約2万㎡の敷地を民間事業者が地元地権者から賃貸していた事例がありました。月額賃料は約160円/㎡、本組合事業地の賃料約80円/㎡はこのほぼ半額です。
 この民間事業地は後に本組合が別施設のために借り直し、賃料は約60円/㎡で地元地権者がご協力下さいましたが、こちらが「市街化調整区域」で造成等の必要もあるのに対し、焼却施設の事業地は「第一種住居地域」でした(現在は準工業地域に変更)
 こうした事情も無視して、地権者に不当に高い賃料を支払うために仕込んだかのような言動は印象操作としか言えません。
 事務執行にはいささかの瑕疵もないと確信しており、上記経過を経ている事業に対して「透明性、公正性」に問題があるかのような荒井氏の疑義は、全く理解できるものではありません。奈良県事業はこれ以上にどれ程のプロセスを踏んで執行されているのか、ご教示いただきたいと存じます。

 荒井氏は、令和4年までの準備段階(ソフト事業)と建設工事への補助を分けて考えるような発言をされていますが、「調査から計画段階、施設整備までの一連を支援する」と私以外の市町村長に説明して参加を呼びかけたのは荒井氏自身です。
 因みに、これまでの報道等では言及いただけていませんが、荒井氏から2年前に「懸念」が示された際に対象とされたのは、本組合の焼却施設だけでした。  
 本事務組合は「リサイクルマテリアル施設」も地元住民から賃借しています(年利3.5%で若干低いですが、60年かければ「地代の2倍以上」と言うことになります)。県内の他の事業でも地元自治会から賃借されていると県から伺っています。
 「なぜ、ここだけが」という疑問に対して、長期間にわたり宗教法人に賃料を支払うのは「政教分離」の点から問題があると知事が指摘していると言われました。

 宗教法人であっても、所有する土地を運用する権利はあります。反社会勢力から借りるのは問題でしょうが、「政教分離」を持ち出してくるのは論理的に成り立ちません。
 仮に宗教法人に公金を支出するのはダメという個人的信条を荒井氏が持っているとしても、ならば「売買」「賃借」ともに否定されなければならず、奈良県が宗教法人の土地を様々な事業で近年買収されていることと矛盾すると言わざるを得ません。

 有識者検討委員会が設置されるならば、本組合は上記の事情を正々堂々と申し上げます。これまでの経緯を無視して県が一方的に打ち切って来た場合には不服審査や行政訴訟も含めて対応して参ります。

 来る奈良県知事選において県民の負託を受けられる新知事が、借地は「一律」奈良モデルの対象から外す、という判断であれば、本組合としてもご趣旨を吟味しなければなりません。
 しかし、ダイオキシンの発生防止などの環境保全や脱炭素化の観点からもゴミ処理の広域化を環境省も重視され、本組合事業を先進モデルとして高く評価下さっています。
 環境省補助金と同様に、売買であれ賃借であれ、奈良モデル補助金は土地の確保に係る予算を対象としておらず、新県政としても広域化を推進する立場を大切にして頂くことを期待します。

                                                                   (以上)